これはゆっくり丁寧に時間をかけて
そう思いながら文字を追う目が止まらなくなる
文章自体が生き物のように呼吸する
私が読み進める時間を決めるのではなく
文章が早足になったり躓いたりするから
私は我がままな犬のリードを握ってあっちこっち進むような読み方になってしまう
エッセイはあまり得意ではない
なのに高山なおみの文章はいつだって私を引き込んでいく
なんでもない風景を一緒になって見ているような錯覚を覚え
読み終わると自分の出来事を思い出したような気持ちになって
なんでもないことのような出来事に涙が止まらなくなってしまっていたりする
自分でも驚くくらい毎回そうなるから不思議だ
ああ、いつか私も振り返った時にこの人の目のように昔を見たいなと思う。
押し入れの虫干し/高山なおみ